月刊彩の国コラム page 21.
赤字年4億! それでも埼玉スタジアム2002
今回のネタは明らかに当コラム第18回(浦和美園)とかぶるんですが、まぁ一度取り上げたものを追跡取材するという意味では“さいたま新都心”につづく大ネタだと思いますですね。なにしろ、今秋の埼玉の話題は“秩父原人”と“埼玉スタジアム2002”に尽きると言っても過言ではありません。
【10月6日(土)オープン】
10月6日から8日まで、体育の日を含む3連休に、埼玉スタジアム2002のオープニングイベントが開催されました。6日(土)午前10時からはオープン記念式典が開催され、W杯誘致の立役者:土屋義彦知事も交えた県民代表12人による“初蹴り”や、浦和レッズの公開練習などが行われました。……でも私はお昼前に家を出たので、記念式典にも公開練習にも間に合いませんでした。
詳しい交通アクセスは後ほど詳しく述べますけど、大宮方面からは武蔵野線に乗り換えて東川口から浦和美園へ出るのが不便なので、私は高崎線で鴻巣へ出て浦和駅からシャトルバスに乗ります。浦和駅東口は駅前広場が狭く、また駅前への取り付け道路も広くないので、埼玉スタジアム行きのシャトルバスは西口バスターミナルの伊勢丹前から発車します(駒場運動公園への臨時バスも)。行先幕は [J01]浦和駅−サッカー場 で、以前から駒場運動公園への波動輸送で用いている幕を、「駒場」と書いていないのをいいことに流用しています。乗り場にはテーブルを出して、バス共通カードを売ったり紙幣などを両替したりしていました。手持ちのバスカードをバスの料金箱に通すと、運賃400円也。13時過ぎでもバスは約5〜10分おきに出ていますが、今から行っても記念式典が終わっている時間帯なので、車内の座席がほぼ埋まった程度で発車。
浦和駅西口から大門・浦和美園方面行きの路線バスは、浦和駅西口から旧中山道を北上、浦和仲町(ロイヤルパインズホテル前)の交差点を右折、東北線をくぐって、国道のわりに狭い463号本道を大門まで進むのですが、私が乗ったシャトルバスは、県庁前を通過して17号線を右折、さいたま市役所前でまた右折して越谷浦和バイパスを走ります。文字で書くとよく分かりませんが、後者のほうが県庁の西側へ回り込む分 大回りになるのです。新浦和橋・新見沼大橋の2つの有料道路を通るので、バイパスへ入れば速いのですが、それ以前に浦和中心部の迂回と混雑があるので、あんまり速く感じられませんでした。
途中ですれ違う[J01]のバスはどれも、午前中の記念式典に参加した県内各地のサッカー少年団が帰るらしく、ほぼ満員で浦和駅へ向かっていました。当方は空いたバスに座ってなんだか得した気分を味わいながら、30分ほどでスタジアム北門に到着です。浦和美園駅へは南門の方が近いので、鉄道とバスとで人の流れを南北に分ける試みになっているのは、まず間違いのないところでしょう。
【交通アクセスの課題】
ここで先に、東雲の得意分野である交通についてやっつけておきます。交通と言っても、自家用車でスタジアムまで乗り付けることはできませんから、来場は電車(地下鉄)かシャトルバスかにしぼられます。
≪問題1≫利用客が予想以上に地下鉄へ集中
11月7日のイタリア戦の直前には、試合チケット申込書に記載された電話番号から、来場客の大まかな地域分布を割り出し、そこからシャトルバス・埼玉高速鉄道などの利用客数を予測していました。
ご案内の通り、観客席数は63,700席で、サッカー専用競技場としてはアジア最大級。来場客 63,700人のうち埼玉高速鉄道・浦和美園駅を利用するのは、当初の予定では30,000人と見込まれていたのですが、実際には37,000人が利用。試合前には、浦和美園駅に着いてから改札を出るだけで30分かかったという人がいたり、逆に帰りは浦和美園駅への入場規制を行ったために、22:45分頃に行列が解消するはずが、実際には23:20頃まで行列が消えなかったといいます。これは、明石の圧死事故に教訓を得た「人の流れを早くするよりも、安全が最優先」という雑踏整理の強化が裏目に出て、増発された電車がさほど混まないうちに発車していったという皮肉な実態があったのです。……かといって、電車は10秒刻みのダイヤが組まれているので、満員になるまで待つわけにもいきませんし。でも逆に、「これくらいの混雑なら、次も列車で来ます」という人もいたようですし。
≪問題2≫予約制シャトルバスはPR不足
スタジアムのオープニングイベントや、こけら落としとなった浦和×横浜戦(10月13日)と異なり、対イタリア戦では、浦和駅西口(JR京浜東北・高崎・宇都宮線)・東浦和駅前(JR武蔵野線)・北越谷駅西口(東武伊勢崎線)の3駅からのシャトルバスを完全予約制にし、さらに一部旅行会社はさいたま新都心駅東口(JR京浜東北・高崎・宇都宮線)からも往復バスを仕立てました。しかし事前のPR不足がたたって、前3駅からのシャトルバスの予約状況は、試合前夜で47%という悲惨な状況。やむを得ず、県は当日・乗車直前まで、シャトルバスの乗車券を発売。それでも「渋滞で時間が読めない」とのイメージで敬遠されたのか、帰りのシャトルバスは予測24,000人に対して実績14,000人となり、計画輸送は大失敗。
ちなみに県のボランティアが、対イタリア戦当日に来場客の聞き取り調査をしたところ、シャトルバスの予約制を知っていたのは約5割で、試合前夜の予約状況とほぼ合致するのです(バス予約制を知っていても、地下鉄で来る人はいるでしょうけど)。
≪問題3≫駅のキャパシティが追いつかない
降りるにも乗るにも待たされたという浦和美園駅の実態は前述のとおりですが、一応ここは利用客が短時間に集中することが見込まれているので、駅前広場に面した駅舎の“軒下”部分に自動券売機を仕込んでありますし、乗車専用の臨時ホームも用意してあります(写真右→:オープン当日午後も、臨時出札口が開いていた。14時頃までは列車が増発され、臨時ホームも使われていた)。……しかし埼玉高速鉄道は6両編成で、編成長はJR山手線(11両・うち1両は6扉車)のほぼ半分しかありません。だからと言って、列車の長さや駅設備をW杯のような極大需要に合わせると、埼玉高速鉄道も営団南北線も平時は利用客が少ないので、車両や設備を持て余し気味になってしまいます。
また、埼玉高速鉄道から武蔵野線への乗り換え客が多く見込まれるJR東川口駅は、つい8ヶ月前まではただの中間駅だったのに、地下鉄が直下を走り、サッカー場ができてしまったばっかりに、重要な乗換駅に成り上がってしまいました。それも、東浦和の人が東京都内へ通勤するために東川口から地下鉄に乗るというような“定期乗換客”は稀で、ある1日の午後から深夜にかけて数万人が殺到するという、極めて特異な乗換駅なのです。
繰り返しになりますが、つい先日までは新興住宅地を控えた中間駅でしかなかったので、ホームは上下共用の1面だけで格別広くもなし。そして改札口は1ヶ所だけで、自動改札機は4基しかありません。……さらにその隣には、既出のシャトルバスの発着点の一つである東浦和駅があります。ここはいまだに中間駅で、ホームは上下で分かれているものの、駅の規模は東川口と似たり寄ったり。しかも、東浦和駅行のシャトルバスが、東浦和駅の混雑の具合を見て運行調整するというから、……ギリギリ目一杯なんですなぁ。
で、JRの駅に置いてあった「JR+埼玉高速鉄道で行く/埼玉スタジアム2002/アクセスガイド」(写真右上↑)というのを持ってきたのですが、
東川口駅の注釈は「乗り換えで大混雑が予想されます。安全確保のため、入場制限などを行いますので、予めご了承ください。」
さらに東浦和駅の注釈には「“帰り”の東浦和駅では混雑のため、シャトルバスから南浦和方面の電車はお乗りになれない場合があります。」
一応、埼玉スタジアム2002で試合がある日には、埼玉高速鉄道だけではなくJR武蔵野線も臨時列車を運行するようですが、うまくさばけますかどうか。
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