月刊コラム page 21.
 赤字年4億! それでも埼玉スタジアム2002
《その2》

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  【サッカー専用スタジアムと根付かぬ天然芝】

スタジアム北門   北門のゲートをくぐると、……なんだか閑散としています。場外のイベントは南門のほうに集中しているので、北門の外の広場をバスが発着するのと、防災ヘリや消防車の屋外展示のほかは、なんとも盛り上がりに欠く景色であります(写真右→)

 バリアフリー施設の一つである、2階デッキへの緩やかで広いスロープをちんたら歩いて登り、コンコースを通り抜けると、スタンドの真ん中に出ました(写真右下→)。優勝戦の舞台となる横浜の競技場と異なり、ここはピッチの周囲に陸上トラックがない“サッカー専用スタジアム”なので、スタンドからピッチまでの距離は最短で14mと、観客も選手もお互いを間近に感じられる造りになっています。
 しかし、ヒートアップした観客がピッチへなだれ込まないように、スタンドとピッチの間には深さ3mの“空堀”が設けてあります(↓写真左下)。これは、W杯用競技場の仕様として、FIFAから要求されている必要条件なんですって。
 ちなみに、埼玉スタジアム2002のシンボルとも言える2枚の三角屋根は、福岡ドームのように動くわけではありません(写真右下↓)

正面やや北寄りからピッチを望む  実はスタジアム全体の3分の2を覆うこの屋根のおかげで、日当たりや風通しが妨げられ、せっかくの天然芝がなかなか育たないという悩みを抱えています。冬でも緑を絶やさぬよう3種の芝をブレンドしたり、土の中に導水パイプを張り巡らして地温が下がらない工夫を施したりして、とことん天然芝にこだわっているのですが、3月に蒔いたばかりの芝がまだしっかり根付いていないために、オープン時のレッズ公開練習でも「あまり激しく動いていないのに芝がはがれた」という選手の声が聞かれました。
 また11月7日の対イタリア戦でも、計100ヶ所以上の芝がはがれ、国内外のメディアは「ビーチサッカー」「月面のクレーター」などと酷評したようですが、スタジアムを管理する埼玉県公園緑地協会は、「スタジアムはW杯までを目標に計画したもので、この時期の芝の損傷は仕方ない点もある。来春は万全の状態で迎えられる。」と話しているそうです。
(11月11日「朝日」埼玉版より)

スタンドとピッチの間の“空堀”  正面スタンドの屋根


南門を出て、スタジアムを望む

  【南門から浦和美園駅へ】

 10月6日のオープニングイベントをうろついておりますが、ピッチでは入れ代わり立ち代わり、近隣の青少年チームが練習試合を行っています。知らないチームを眺めてみても面白くないので、スタンドを離れてふらふら南門へ出ますと、ハートフルフェスタ・食ブースが立ち並んでいます。地元商工会やさいたま市内の飲食店、さらにブラジル・インド・ベルギー・イタリア・中国などの外国料理が模擬店を出しています。なんと申しますか、秋祭りの市役所前広場のふれあいイベントみたいな風情ですが、これもまたよし。てんこ盛りのスパゲティや、鶏の唐揚げ、シシカバブなど、あれこれつまんですっかり満腹。飲み物を求めてコカコーラの出店へやってくると、赤い水槽の中に1.5〜2リットルのペットボトルがたくさん浮いていて、W杯本番さながらに紙コップへ移して手売りしています。 歩道沿いの、アジサイの苗木 そのとなりには、熊谷名物「五家宝」の製作実演販売を行っています。……五家宝を作っているところを見たのは、初めて。ちょいと立ち止まって見入ってしまいましたが、できたての五家宝を浦和の土産にと買い求めるのはどこか違うと感じ、買うのはよしました。
 スタジアム南門を後にすると、浦和美園駅まで普通に歩いて徒歩20分の道のりです。南門から300mほどにわたって右側(西側)に雑木林が続き、歩道との間には用水路、そして歩道脇の植え込みにはアジサイが植わっています。浦和美園駅からゆっくり歩いておよそ20分、平坦な歩道とはいえ歩くのに飽きてきた頃の観客たちを、ちょうど見頃のアジサイが迎えてくれるという、誠に心憎い演出ではありませんか。……コラ!そこのガキ、アジサイの苗木を足蹴にするんじゃない!

浦和美園駅からの歩道に距離表示
◆浦和美園駅から歩くと、100mごとに駅からの距離標示。帰りの(スタジアムからの)距離標示がなかったけど、帰りは大混雑して見えないから不要か?(写真右→)


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