東雲の瞬発的ハワイ日帰り旅
 (2005年7月2日〜3日・日帰り+車中1泊)
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その3◆はわいにひたる

 10:10 白兎海岸のローソンを後にする。交通量は多いが、流れている。いくつかのトンネルを抜けて下り坂にさしかかると、片側1車線から2車線に増えて走りやすくなる。海岸に並行する広くてまっすぐな国道を左(南)に入れば、貝がら節のふるさと・浜村温泉。貝がら節がどんな民謡なのかは知らないが、山陰随一の湯量を誇るというこの温泉、帰りに時間があれば立ち寄ってみたい。と思っているうちに地形はまた山がちになり、上り坂にさしかかると、片側2車線はまた1車線に戻る。

 10:30 浜村から一山越えて、青谷あおやでいったん国道9号線から山側に入る。浜村も青谷も、昨秋2004年11月1日をもって鳥取市に編入された。旧・青谷町(⇒鳥取市)の西隣は旧・泊村(⇒湯梨浜町)で、平成の大合併のせいで“はわい”は鳥取市の隣町ということになったのである。……現在地を示す道路標識には真新しいステッカーが重ねて貼られ、この地を初めて訪れた私でもほんのりと違和感を感じる。
 緑色の道路標識に従って旧青谷町役場を通過し、JR山陰線の線路をくぐって、青谷ICから青谷羽合道路に入る。この道は「山陰自動車道《※3》」の一部で、青谷IC〜泊東郷IC〜はわいICの15.6kmが、高規格幹線道路(一般国道の自動車専用道路)として供用開始した。片側1車線の暫定開業だが、最高速度は70km/hでカーブも勾配もゆるく造られているし、インターチェンジも料金所を設置できるスペースをとってある。いつでも有料道路に転用できるようにはなっているが、2003年3月に無料で通れる一般国道として開通してしまったからには、もう有料化なんてできないだろう。

道の駅はわい  10:40 道の駅はわいに到着。道路が無料だから“道の駅”と名乗っているだけで、実質的には自動車専用道路の途中にある“サービスエリア”。ただし、ガソリンスタンドはない。施設は上下線共通で、どちらからも出入りできるので、Uターン可能である。鳥取方面からクルマでやってきて最初の“はわい”であり、いわばはわい巡りの起点となる。

 一続きになっている建物に向かって左から、コンビニのポプラ、“レストランはわい”という名の食堂、トイレと地元情報コーナーがあって、ここまではサービスエリアっぽいのだが、建物の右半分を占める物販スペースは、いっぺんに道の駅らしさを醸し出す。海産物・農産物や民芸品を売るお店が6軒、同じ広さのスペースをあてがわれており、朝から気になっていた鳥取産のすいかも大小取り混ぜて陳列されている。数人連れ立っての旅ならば、中ぐらいのを一玉買い込んで、今夜の宿で切り分けて食うということもできるのだが、いかんせん今回は一人旅、しかも日帰り、さらに一人暮らしときたもんだ。すいかは大好きだが、頑張って自宅まで持ち帰っても、冷蔵庫に余裕がない。ここは涙を飲んで、海産物に目を転じることにする。 道の駅はわいで買った「たこごぼう天」 冷凍のカニ脚だの旬の岩ガキだのと大掛かりなものは遠慮して、ぐっとお手頃に「あご天」2枚入りと「のやき」という名のちくわを購入。ついでに物販スペースの片隅にある軽食コーナーで「たこごぼう天」(←写真左)を買い求める。西日本で「天ぷら」といえば、おでんの具になるさつま揚げのような練り物のこと。スティックアイスのように細長く竹串に練りつけたものを油で揚げてあって、注文してからもう一度揚げてくれるので、できたてに近い味わい。二度揚げしたのに全く油っぽさがなく、さっぱりとして旨い。油が手につかないように、竹串の手元に紙ナプキンが巻いてあるのも心憎い。

 11:20 道の駅はわいを後にする。青谷羽合道路の終点・はわいICで国道9号線と合流するが、すぐ左折して、湯梨浜町役場羽合庁舎へ。元・羽合町役場だが、当然土曜閉庁日。敷地内には羽合歴史民俗資料館というのが併設されているが、こちらも開いているのかどうかよくわからない館内の暗さ。後で調べたら“休館日=月曜・祝祭日”なので、入ろうと思えば入れたらしいが、今日の気分は古代の遺跡とそぐわないので、そそくさと立ち去ることにする。

ハワイ海水浴場  11:40 東郷湖羽合臨海公園という県立公園の一部にあたるハワイ海水浴場にやってきた。ちなみに「ハワイ」「はわい」「羽合」という表記のゆれには何の法則性もなさそうで、ついでに節操もなさそうで、おそらく名づけたときのノリで決まっているような気がする。
 幅の狭い砂浜から一段高くなったところには、遊歩道とパーゴラが造られている。橋津川の河口に近い砂浜の西端では、海の家を建てている最中らしく、年季が入った材木で建物の骨組みが組まれていた。波打ち際が緑色になっているのは、前日までのシケで浜に打ち上げられた海藻。よく見ると、赤いものや無色透明のものも、さらにナマコだかウミウシだかよくわからないが軟体動物まで浜辺に打ち上がっている。日本海とはいえ都市部から離れているから水質はよさそうだし、この砂浜も真夏になれば賑わうのだろうが、少なくともこのままの浜辺では水に入りたくない。誰かが海藻やらゴミやらを拾い集めるのだろうか。

ハワイライスセンター  ←写真左は、はわいICから町役場へ向かう途中にあるJAハワイライスセンターJA鳥取中央の中では「羽合ライスセンター」ということになっているらしい。ライスセンターというと「米の倉庫」か「精米工場」または「米飯をまとめて炊くところ」という複数の意味があるようだが、ここは「米の倉庫」。一般向けの販売はおこなっていない。そんなことより、ハワイといえば“れんげ米”の里だそうだ。さらに、ハワイといえば“いちご”で、しかも“とよのか”だそうだ。“とよのか”って福岡県じゃねえのか、と思ったが、まぁ品種名なんだし、新潟のコシヒカリだって茨城や富山でも作られてるんだから、そんなもんなんだろう。

 12:20 いよいよはわい温泉の中心部へ入っていく。 ハワイゆ〜たうん 鳥取県東伯郡湯梨浜町大字はわい温泉という住所の中に旅館やホテルが20軒近くあり、日帰り入浴ができる宿もいくつかあるようだが、今回は日帰り入浴専用の町営温泉施設ハワイゆ〜たうんを訪れる。土曜の昼下がりなのに、けっこう空いている。ロビーでは近所の常連客らしき人々が十数名、ソファに腰を下ろして「生活笑百科」を見ている。フロントでお金を払って脱衣場に入ると、先客が誰もいない。浴室に入れば、これまた誰もいない。1993(平成5)年にできたこの施設は、天井が高くて広々としているが、ところどころに洗い場も浴槽もない“壁”だけのスペースが見受けられる。ここに泡風呂か薬草風呂があってもいいような雰囲気だが、浴槽も洗い場もなく、乾いたタイル張りの床だけ。
ハワイゆ〜たうん 脱衣場の小上がり さらに奥には、陽光がさし込む大きな掃き出し窓があり、窓の外には高い囲いとちょっとした植木があるので、小ぢんまりとした露天風呂があるのかなと思ったが、これまたタイル張りの床だけ。もっとお客が増えてお金がたまれば、浴槽の増設もあるのだろうか。それでも、逆にシンプルさと広さを売りにするならば、入館料350円(小中学生は200円)がご当地の銭湯と比べて高いかも知れないが、けっこういい線をいっていると思う。ちなみに洗い場の備品は石鹸だけ。いさぎよい。

 風呂から上がる。脱衣場の中に低い壁で仕切られた、中庭に面する一角があり、畳が敷かれちゃぶだいが置かれ、テレビや座布団が用意されている。お茶の用意でもあるかと思ったが、脱衣場内には自販機しかないので、ペットボトルのお茶を買う。湯上がりの身体を休めるスペースはどこにもあるが、脱衣場の中にこういう座敷をしつらえてあるのを見たのは初めてだった。お目当てのはわい温泉に入ってしまい、この後はどこへ行こうかと思案しながら、今朝買った日本海新聞を開いてみると、たまたま地域面に湯梨浜町の記事が載っていた。「うれし、恥ずかし 役場アロハ、新町でも採用」という見出しで、ちょうど前日の7月1日から、湯梨浜町の役場職員がアロハシャツに衣替えしたという記事。もともとは旧・羽合町で役場職員が話題づくりにアロハシャツを着て仕事をしていたが、合併で羽合町がなくなることからアロハも存亡の危機に立たされた。しかし、ハワイアンフェスティバル・ハワイまつりなどハワイ関連のイベントが集中する7月を盛り上げるために、そして合併したばかりの新町の再結束を図るために、湯梨浜町全体でアロハシャツ着用を決めたとのこと。旧羽合町の職員は慣れているからいいけど、旧東郷町・泊村の職員は「一体感が生まれるのはいいことだけど、……ちょっと気恥ずかしい」。

 13:15 ハワイゆ〜たうんを後にして、昼飯を食いに行く。はわい温泉界隈でハワイ料理にありつければ、と思っていたら、あったあった。ハワイアロハホールの隣にあるKITCHEN CAFEルアウ。建物そのものはログハウスというかコテージっぽく、木の質感を大切にした造りでいい雰囲気。メニューを見ると、エビフライ定食やスパゲティなど、町の食堂か喫茶店のようなラインアップだが、メニューのおしまいのほうに「ロコモコ(ハワイアン丼)」を発見。ついでに「牛ヒレロコモコ」というのもあるらしい。アメリカのハワイに行ったこともなければ、ハワイ料理を食べたこともないので、メニューの中にロコモコ以外のハワイ料理があるかどうかもわからないが、とりあえず牛ヒレロコモコ(ミニサラダ・パインジュース付)を注文。
 待つこと十数分、ようやく出てきたロコモコは、なるほど(ハワイアン丼)とカッコ書きするに値する一品。半熟卵をのっけるのならもっと濃い目の味付けにすればいいのに、ずいぶん汁だくさんである。こういうもんなのかなぁ。現地の正しいロコモコを知らないので、私の中でのハワイ料理は「鳥取で食ったロコモコ」が今後の基準ということになる。

ルアウ 牛ヒレロコモコ




《※3》山陰自動車道……鳥取市から鳥取県・島根県を東西に貫いて山口県美祢市に至る、総延長約380kmの高速道路。青谷羽合道路のほかにも、淀江大山IC(鳥取県大山町)〜宍道JCT(松江市宍道町)・江津西IC(島根県江津市)〜原井IC(島根県浜田市)が開通済みで、部分によって「米子道路」「安来道路」「松江道路」「江津道路」「浜田道路」などと呼び分けられている。建設主体や時期などによって、高速道路・有料道路・一般国道と扱いがバラバラで、たとえばひとつづきになっている淀江大山IC〜宍道JCT間の約57kmだけでも、「淀江大山IC=(米子道路)=米子東IC-(米子道路)-米子西IC=(安来道路)=東出雲IC-(松江道路)-松江玉造IC=(松江自動車道)=宍道JCT」と、有料区間(=)無料区間(-)が入り乱れている。
 【2006年5月追記】米子道路:淀江大山IC〜米子東ICは2006年4月から無料化。


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