東雲の瞬発的ハワイ日帰り旅
 (2005年7月2日〜3日・日帰り+車中1泊)
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湯梨浜町略図

その4◆ついでに倉吉など

 ……「その3」を書き上げてから「その4」に着手するまで、おそろしく時間の隔たりがあるので、もはやタイムドキュメント形式で書き綴ることができない。残された写真を見ながら記憶をたどり、コメントをつけていくことにする。

 さて、はわいアロハホールの隣の“ルアウ”で、ハワイらしい昼食としてロコモコを食った後は、隣町・倉吉へ行ってみよう。地図で見ると、山陰本線は倉吉付近で大きく南に迂回しているが、実際の市街地はもっと南の内陸よりで、かつては国鉄倉吉線が右図の点線のとおり、市街地を貫いて走っていたのだが、赤字のために昭和60年3月末までで廃止となった。この廃線跡をたどってみたいし、三朝温泉・関金温泉もあるので、もうひとっ風呂浴びてみたい。再びレンタカーに乗り込み、南下。ちょっとした峠道を越えて倉吉市に入り、倉吉駅付近から山の手の市街地へ入っていく。
 倉吉はもともとは城下町で、江戸〜明治期に建てられた白壁に赤瓦の土蔵が独特の景観を生み出し、一帯は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。バス停の名前にも「赤瓦・白壁土蔵」「白壁土蔵群前」と名づけられているほど。古い町並みなので道路は狭く、一方通行も当たり前。駐車場も少なく、土蔵群の南側に位置する倉敷市役所の駐車場が、閉庁日の土曜・休日には観光客向けに開放される。私もどうにか市役所構内の駐車場に車を止めて、市街地を散策する。

倉吉市役所
打吹山の斜面にへばりついて建っている、倉吉市役所
打吹公園
打吹公園の入り口
第53代横綱・琴桜
第53代横綱・琴桜は倉吉出身だそうで
旧・倉吉線 打吹駅跡
旧・国鉄倉吉線の打吹駅跡地に、無料の記念館

 白壁土蔵群の北側に隣接して、旧国鉄倉吉線の打吹(うつぶき)駅の跡地がある。市街地の真ん中で市役所からも近く、立地だけで言えば決して悪くないポジションだが、人口5万人程度の地方都市だし、JRの特急も2両編成で走っていることを考えれば、廃止もやむをえないだろう。ちなみに打吹の次の駅だった西倉吉は市街地の山側の端にあたり、現在はバスの営業所やターミナルができている。

関金温泉・湯命館
関金温泉・湯命館(ゆーめいかん)
西倉吉にて
西倉吉駅跡は公園になっている

 西倉吉駅から小鴨・上小鴨駅までは、サイクリングロードとして整備されているが、鉄道の駅だったことの名残りは、駅の片隅にある、上のような看板ぐらいしかない。その看板も、何者かによって白いスプレーを吹き付けられたり落書きされたりして、まともに読めない状態である。
 県道から外れて、廃線跡に近いところをゆっくりたどりながら、関金温泉へ。関金町は、2005年3月22日に倉吉市に編入されたばかりで、倉吉にも新たな観光の目玉ができた。ラドンを含む単純放射能泉で、旅館・民宿が4軒に国民宿舎グリーンスコーレせきがね、それから自炊タイプの“素泊まりの宿湯楽里(ゆらり)”があり、すぐそばの三朝温泉に比べれば小規模だが、穴場と言える。日帰り入浴施設は、地元の107人による共同経営の“関の湯共同温泉”と、8種類のお風呂がある“湯命館(ゆーめいかん)”、さらに最近はやりの足湯もある。鳥取空港や道の駅はわいでもらった各種パンフレットをめくって検討の結果、湯命館へ行くことに決定。貸しタオル別で800円は少々高いような気もするが、さっきのハワイゆ〜たうんに比べて(比べるのも悪いくらい)かなり設備が充実。外に出なければ再入浴も可で、大広間でごろりと横になって、少々うたた寝。夕方5時ごろまで居座ってしまった。

 夏至を過ぎたばかりでまだまだ明るいが、雲行きが再び怪しくなってきた。またレンタカーに乗り込んで、ラジオをつけてFM鳥取にチューニングを合わせる。17時からやっている、TOKYO FM制作の「サタデー・ウェイティングバー AVANTI」、この日はちょうど“落語ブーム”がテーマと日本海新聞のラテ欄に載っていたので、初めて聴いてみる。ゲストは高田文夫・春風亭昇太・立川志らく・木の実ナナ・松尾貴史。個別にトークをする合間に、富沢美智恵と宮川賢がコント仕立てのショートドラマをやっていた。ゲスト一人に10分もかけないので、突っ込んだ話を聞けない。バーの隣の客の会話に耳を傾けるというのが番組の設定らしいが……。まぁ、FMで落語「ブーム」の話をするのなら、こんなもんか。
 その番組が終わる頃に、JR松崎駅に立ち寄ってみる。駅を出て正面に「とっとり梨の花温泉郷 東郷温泉」というアーチが建っている。つきあたりは東郷湖で、以前は松崎港から羽合温泉まで船が出ていて、時刻表にも載っていたのだが、数年前に廃止。はわい温泉側でも、はわい温泉の最寄り駅は松崎ではなく倉吉ということになっている。

JR松崎駅
JR山陰本線・松崎駅
松崎駅前・東郷温泉の歓迎アーチ
松崎駅前に建っている歓迎アーチ。つき当たりは東郷湖。

 県道を北上して泊で国道6号線と合流。鳥取空港を左に見ながら通り過ぎて、鳥取駅そばのレンタカー営業所へ返却。時刻は19時ちょっと前で、20:24発の寝台特急〔出雲〕にはまだ時間があるので、鳥取駅高架下の駅ビルで夕食とする。せっかく鳥取まで来てパスタやとんかつを食べるのはもったいない。日本海の幸を売りにしている回転寿司に入ってみる。確かにネタは種類豊富でいいのだが、どういうわけだか醤油が甘い。穴子につける“煮つめ”のびんを手に取ってしまったのかと思ったが、他のびんの中身も同じだ。厳密には“煮つめ”ほどドロッとしていないが、寿司そのものは酢めしにわさびも使ってある“江戸前”に準じたスタイルで、甘いたれを使う意義がますます分からない。結局、思う存分に楽しむことができず、お勘定は1000円でおつりがきてしまった(当然、激安店ではない)。……帰ってから、島根出身の人にこの話をしたら、「意識はしてなかったが、言われてみれば、そんな気がする」とのこと。そういう食文化なのだろうか、いまだにハッキリしない。

 改札前のKIOSKで缶ビールとちくわと、おみやげのお菓子を少々買って、高架のホームに上がる。島根県地方が大雨でダイヤが乱れており、出雲市始発の寝台特急〔出雲〕も20分ほど遅れているとのこと。待ちきれず、ホームのベンチで缶ビールをあける。
 20:45頃 西日本地方独特の、列車入線時のベルに導かれるように、DD51型ディーゼル機関車に牽引されてブルートレインが鳥取駅に入ってきた。“カイコ棚”とあだ名される開放式B寝台は、上段に誰もおらず、梅雨明け前とはいえ、土曜の夜の東京行は乗車率5割を超えるか超えないかの低調ぶり。今思えば、翌・2006年春に姿を消すのも、致し方ないところであった。
 乗り込んで自分の寝台を見つけて、シーツを敷いて荷物を置く。ゴロリと横になれば、いつでも寝られる体勢だが、まだ21時。さっき関金温泉で昼寝したし、今回の旅はあまり歩き回らなかったので、缶ビールの力を借りても、まだまだ眠くない。窓辺に携帯ラジオを置いて、周波数を合わせてみても、地方局は出力が弱いので車内に電波が届かないし、頻繁にトンネルへ入ってしまうので、どうやらプロ野球のナイター中継だろうな、地方局だからきっと巨人戦だろうな、という程度であんまり聞こえない。どうでもよくなって、横になってるうちに、次の停車駅の浜坂を過ぎたところで眠りに落ちた。
 結局そのまま途中で目が覚めることもなく、目が覚めたのは神奈川県内の小田原を通過したあたり。ごく簡単に顔を洗って、戻ってくると横浜駅に着いたところで、上り列車を待つ人にこちら側を覗かれているようないないような、微妙な視線を感じたり感じなかったり。山陰地方の遅れを夜中のうちに取り戻して、定刻どおり 6:57 東京駅に到着。京浜東北線に乗り換えて、朝8時には川口の自宅に戻ってきた。普段の日曜日なら昼頃まで寝ているところで、さぞ有意義な日曜日かと思いきや、せいぜい旅の洗濯物を片付けたぐらいである。



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