東雲の瞬発的ハワイ日帰り旅
 (2005年7月2日〜3日・日帰り+車中1泊)
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その2◆大雨に向かって飛べ

 6月の記録的な少雨で渇水にあえいでいた西日本地方が、7月の声を聞いたとたんに大雨に見舞われ、けっこう大変なことになっているらしい。新潟県地方も夏に水害、秋に地震で、また大雨とは、かける言葉もない。富山で下校途中の子供が用水路に落ちたとか。その大雨の区域は徐々に西へ動いている、とも言っていた。

 4時半、ラジオのアラーム機能で目が覚める。目覚ましらしく音圧で起こされたというよりも、枕元でピーピーと人工的なか細い音がするので、違和感で目が覚めたという感じ。まるで聴力検査のような雰囲気で、我ながらこんな小さなアラーム音でよく目が覚めたものだと感心する。窓の外は雲が多いが、薄日がさしている。

 パソコンの電源を入れて、鳥取県地方の天気予報を見ると、ものすごい雨雲が中国地方にたすきがけになってかかっている。よーく見ると、鳥取県の東部から中部にかけては辛うじて雨雲がかかっていない。しかしあれだけの雨雲、ちょっとずれてくればいっぺんに土砂降りとなる。大雨の中で車を運転するのも心細いが、私はまずあそこに向かって飛行機で飛んで行こうとしているのだ。着陸できるのだろうか。着陸地変更されては、レンタカーの予約が無駄になってしまう。
 朝食の代わりに菓子パンをかじりながら、手元のパソコンで「スマートeチェックイン」を済ませる。まさか自宅を出る前にチェックインができるようになるとは。……今までは予めチケットを買って空港のカウンターで搭乗手続きをしていたのが、自動チェックイン機になり、Web予約のときのクレジットカードがあれば当日に搭乗券を受け取れる“チケットレス”になり、そして今や自宅のパソコンや携帯サイトで希望の座席まで指定できる(搭乗当日の午前0時以降)。手元にチケットがないから、出発時刻などが分からないけど、Webでの申込み時に受付完了メールを携帯へ送ってもらえばOK。さらに、出発の1時間ぐらい前には当該便の運行状況(定刻とか○分遅れとか天候調査中とか)をメールで知らせてくれる。……まぁ、大したもんだよ。

 5:20、朝刊が届く前に家を出る。川口駅まで徒歩10分、乗りたい列車は5:29発なので、小走り気味になる。駅の階段を登りきる頃には、軽く汗ばむ。今日は蒸し暑くなりそうだし、複数の温泉に入るから、替えのTシャツを4枚バッグに入れてある。5:29 大船行に乗車。8分後の列車でも一応間に合うのだが、久しぶりに京浜急行に乗りたい気分なので、いろいろと検索した結果、品川6:17発の快特羽田空港行にターゲットを定める。品川を出ると途中の停車駅が京急蒲田だけなので、快走に期待したい。睡眠不足を挽回すべく、座席についたらすぐ目をつむるが、眠気が来ない。……そういえば、ガムをかんでいた。

 5:50 それでもうつらうつらしながら、列車は何事もなく上野駅の4番ホームに滑り込む。しかしドアが開いたところで、車内放送。新橋駅で5:20頃に人身事故発生、よりによって京浜東北線南行電車だとか。この列車は上野駅で抑止となってしまった。「品川までは3番線の山手線外回り電車を」と言うが、山手線とはいえ早朝6時前、次の電車まで7分ほど待たされる。「地下鉄・私鉄各線へ振り替え乗車実施」と言われても、飛行機の時間があるからあまり遠回りはできず、山手線を待つ方が利口だ。まだ中電各線の上り一番列車が上野まで到達していないから混雑はさほどではないが、定刻5:57発の外回り電車は3分遅れで上野駅にやってきた。6:00、乗車率100%を軽く超えた程度で山手線が発車。上野から品川まで18分かかるから、品川6:17発の“快特”羽田空港行には間に合わない。ここで困るのは、京急は羽田方面行きの間隔がばらついていることと、品川〜羽田を最速14分で結ぶ“快特”が少ないこと。もっと遅い時間ならJRの列車本数も多く、余裕をもって京急にのぞめるのだが、今回は京急をあきらめ、浜松町から東京モノレールへ乗り換えることに決めた。あらかじめ調べておいたところによると、このまま行けば浜松町6:20発の“快速”に余裕を持って間に合うから、ちょうどいい。6:14 浜松町で下車。土曜の早朝、やはり大荷物を抱えている人が多い。この中に、鳥取へ向かう人はどれだけいるのやら。

 6:20 白・水色・紺という開業時塗装の車両で、“快速”羽田空港第2ビル行が発車。停車駅は「浜松町〜天王洲アイル〜(通過)羽田空港第1ビル羽田空港第2ビル」で、線路設備の都合で快速が普通を追い抜くことはできないが、普通よりも5分速く走ってくれる。プラットホームには快速に乗らない人々が結構多かったが、流通センターや整備場などへの通勤客だろうか。6:38 JALグループが使用する第1ターミナルの直下、羽田空港第1ビルに到着。乗客の半分以上は降りてしまったような気がする。

 6:40 第1ビル駅を出ると、線路はぐるーりと大きく右にカーブして、羽田空港第2ビルに到着。自動改札機にSuicaをタッチして出ようとしたら、改札機の天面にステッカー広告が貼ってあって、鳥取のスイカとある。Suica(またはモノレールSuicaが使える改札機に西瓜の広告を出すのは、きっと“狙い撃ち”にちがいない。さらに今日の自分の行き先が鳥取県であることもあいまって、「おぬしなかなかやるな」と、軽くニヤリとしてしまった。

 6:45 地下1階のモノレール駅からエスカレータを上がり、2階の出発ロビーに上がる。7:00出発の大阪(伊丹)・札幌(千歳)行に乗る人は一番右の優先ゲートへお急ぎください、とあちらこちらでスタッフが地声を張り上げている。有人カウンターには、旅慣れてなさそうな家族連れや中高年の人々が、スタッフの説明を受けながらチェックインしてもらっている。当方も決して旅慣れてはいないけど、列のできていない自動チェックイン機の前にやってきて、「ANAマイレージクラブEdyカード」をちょいと当てると、続いてどこをどう操作すればよいのかなと思うか思わないかのうちに、つるりと搭乗券が出てきた。いくら自宅でチェックイン済みとはいえ、なんともあっけない。拍子抜けというか、肩透かしというか。たしかにラクで便利なんだけど。これから飛行機に乗るぞ! とかいう意気込みもできないまま、手荷物検査場の列に並ぶ。
いきの搭乗券と帰りの寝台特急券  財布、腕時計、デジタルカメラ、PHS、それから前回引っかかった携帯ラジオも胸ポケットから取り出して、さらにビニール傘も手荷物トレーの上にのっけて、トートバッグと一緒にX線検査機に通してもらう。身一つでゲートをくぐると、……ブザーが鳴った。係官が一見してベルトのバックルではないかとおっしゃるので、ベルトを外して手渡して、ついでに靴を脱がされてスリッパに履き替えて、もう一度ゲートをくぐって、めでたく放免となる。放免はいいけど、乗客のみならずキャビンアテンダントなども往来する出発ロビーの片隅で、ズボンのベルトをしめなおすというのは間抜けである。次回こそは、ゲートに反応しなさそうなベルトを選んでのぞみたい。……でも、次回までに忘れるんだろうな。

 7:01 ロビーのテレビがNHK「おはよう日本」7時のオープニングを映し始めた頃、ANA293便・鳥取行の搭乗開始。さっきチェックイン機で受け取った搭乗券(写真右→)は、武骨な自動改札機で回収され、半券だけになってしまった。たかだか15分。それにしても検査場を通ってすぐの58番搭乗口という好位置に、よくぞ鳥取行があてがわれたものだ。機体はエアバスA320、166人乗り。通路1本を挟んで左右に3席ずつ。以前に帯広へ飛んだときは270人乗りだったので、それよりもずいぶん小さい機体である。家を出る前の“スマートeチェックイン”で座席表を見ていたときは、後方の座席がスカスカに空いていたが、実際に乗り込んでみると、私の席(後ろから3〜4列目くらい)のあたりは窓際に1人ずついるだけであった。私の前も後ろも、そして私も窓際のA席を取っているので、背ずりを倒すときのためにB席へずれようかと思ったが、たかだか70分のフライトなので、A席にしがみつくことにする。
 7:10 座席がぜんぜん埋まらないまま、機体が搭乗口を離れて動き出す。ターミナルビルの北側に出て、陸側の滑走路の北端につく。日航機がたむろする第1ビル側の滑走路から、そんなに長くない助走を経て、ひょいっと身軽に離陸。眼下には海ほたる、横浜の八景島、そして座間・海老名、厚木あたりから山あいへ。上昇中からよく揺れる。そろそろ水平飛行に移るはずだが、今日は全国的に天気が悪いようで、ベルトサインが消えない。飲み物サービスを取りやめる旨の機内アナウンスがあった。ちなみに暇つぶし音楽サービス「ANA SKY AUDIO」の10ch“全日空寄席”は、上方の寄席三味線・内海英華さんの三味線漫談“女道楽”と、ご存じ桂文珍師匠の新作“新篇・能狂言 商社殺油地獄しょうしゃごろし あぶらのじごく”。
 山間部から岐阜市上空にさしかかったところで航行が安定してきたので、飲み物サービス開始、ただし温かい飲み物は出さないとのこと。私はオレンジジュースを所望する。1リットルパックの口の切り方がまずかったのか、ずいぶんと尻回りするようで、通路寄りのC席に垂らしている。琵琶湖上空あたりで機長がアナウンス、揺れないように高度を下げて航行中とのこと。窓から外を見れば、雲の天井に飛行機の屋根をこするようにして飛んでいる。

 8:15 ベルトサインが点灯し、着陸態勢へ。“池”としては日本最大の湖山池が見えてきて、高度を下げながらも鳥取空港の上空をいったん通り過ぎる。日本海に突き出す岬の上に立つ風力発電所の風車を間近に見て右へ大きく旋回。日本海の波頭が見えるくらいまで下がりながら、海に向かって伸びる鳥取空港の滑走路に海側から着陸。滑走路の陸側の端でぐるりと引き返して、滑走路を自走しながらターミナルビルにつける。 8:30 どこで時間を食ったんだか、定刻よりも10分ほど遅れて鳥取空港に到着。乗降口からビル2階に入り、すぐに階段を下りる。手荷物を預けていないので、引渡し所を素通りして、一方通行の自動ドアをくぐって到着ロビーに出る。建物を出た目の前には2台のバスが停まっており、それぞれ鳥取駅行と倉吉・三朝温泉行の空港連絡バスが到着客を待っている。はわい温泉に泊まる人は倉吉・三朝行のバスに乗って松崎駅前で下車すれば、たぶん宿の送迎車が来てくれる(ひょっとしたら空港まで迎えに来てくれるかもしれない)が、私は日帰りだし、あちこちへふらふらとまわりたいので、レンタカーにしたのだ。先客がいて少々待たされたが、その間に売店で日本海新聞を購入。
 8:40 ヴィッツ(禁煙車)で鳥取空港を出発。 レンタカー(ヴィッツ) ラジオをつけると、BSSラジオは「どど〜んと土曜日 新鮮組」という生ワイド番組。しゃべり手の男性と女性は局アナなのかフリーのタレントなのかは知らないが、どうにもかみ合っていないように聞こえる。松江で新装開店したスーパーからの生中継が頻繁に入る。タレントをふんだんに使った東京のラジオ番組に慣れているせいかもしれないが、それを差し引いても、もうちょっとましな番組ができないものか。それとも競争相手がいないからこれでいいのだろうか。
 それでも民放AMラジオがこれしかないので、BSSを聞き続けながら、早速はわい温泉へ向かおうかと思ったが、せっかく鳥取市まで来たのだから、まずは鳥取砂丘をちらりとでも見ておきたい。鳥取空港に最も近い鉄道駅(と言っても1.5kmほど離れているが)鳥取大学前駅の駅前ロータリーに車を止めて、カーナビをセットする。…鳥取砂丘ほどの有名な景勝地なら、ナビなんか使わなくても行けるんだろうけど、こういうものの操作は早いうちから慣れておいたほうがいいにちがいない。今来た道を国道9号線まで戻って右折、覚寺交差点で左折して砂丘トンネルを抜けてすぐの県営無料駐車場に入る。先客が4台しかおらず、そのうち大型トラックが2台ほどで、長距離運行の小休止か。
鳥取砂丘  9:20 茂みが途切れて道っぽくなっているところを通り抜けて、高台に上る。空はどんよりとして低い雲がたれこめており、足元の砂は雨上がりらしく湿気を帯びて重たい。そして人影はまばら、あるいは皆無。もう少し時間が遅くなれば、観光バスが団体客を運んでくるかもしれないが。……端から端まで歩けば自然の偉大さが身にしみてくるのかもしれないが、そんな感慨を抱く前に撤退。再び車に乗り込む前に、靴底についた砂を念入りにたたき落とす。
 9:25 鳥取砂丘の県営駐車場を後にして、今度こそはわい温泉を目指す。覚寺交差点まで戻って国道9号に入り、今度はひたすら西進。鳥取港のそばの賀露かろ町にあるかにの水族館“とっとり賀露かにっこ館”と“鳥取港海鮮市場 かろいち”が少々気になるが、今回はあくまで“はわい”がメインなので、割愛する。

 9:50 鳥取空港から4kmくらい西、白兎海岸に面したローソンで一休み。雨がぱらぱらっと降ったりやんだり、相変わらずな雲行きである。真夏には海水浴場としてにぎわうらしく、曇天のもとで海の家を建てている最中だった。
 そういえば今日・7月2日は、「水曜どうでしょう祭 UNITE2005」の入場券再発売の日。3日間の日程のうち1日分は手に入ったが、もう1日分手に入ればと思い、あらかじめ鳥取県内のローソンの店舗位置を確認していたのだ。入場券の入手手段は、ローソン店頭のLoppiか特別電話、あとはローソンチケットを取り扱うプレイガイド。本発売のときは電話がつながらなかった、と聞いていたので、追加発売のときはLoppiと決めていた。自宅からも北海道からも遠く離れたここ鳥取・白兎海岸で、駄目でもともと、午前10時の発売開始に挑む。
 幸い、Loppiの前に先客はいない。間合いを計りながら9:59にLoppiの前に立つことに成功。電波腕時計の文字盤とラジオの時報をたよりに、10:00にLoppiを操作開始。しかし、「センター問合せ中」とかいう画面が長く表示された後で「回線が混雑しています。操作をやり直してください」というメッセージが出てくる。2回だけ試してだめだったので、……もうしばらく粘れば取れたかもしれないが、ここはあっさり撤退。通り雨がぱらつく中、クルマに戻って50円引きのフライドポテトで小腹を満たした。


鳥取市白兎のローソン

白兎海岸は海の家建設中


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