橋と天羽と音頭と私・そんな梅雨明け前の日帰り旅
 (2003年7月19日・日帰り)
 ★東雲が乗り降りしたり通過したりした駅名・停留所名等には[ ]を付ける。
 ★列車名・バス便などの愛称には〔 〕を付ける。
 ★注釈を要する語句は脚注へのリンク《※0》を張ってある。
  また、短い注釈はカッコ書き(こんな感じ)にしている。
 ★上記の注釈以外でリンクになっている語句は、新規ウィンドウでリンクが開く。
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【その1】
 高速バスで上総湊へ先乗り

  • 8:38 [鴻巣]から10両編成の普通・上野行きに乗り込む。1本前なら15両で、きっと空席もあっただろうが、朝起きるのにモタモタしてしまったので、早めに出られなかった。週間予報では「曇時々雨」となっていたが、日が迫るにつれて雨の確率は減少、今日は傘を持たずに出てきた。日帰り旅なので着替えも持たず、荷物は札幌で買った黒いトートバッグ一つである。
      そもそも前夜の金曜日は終電直前で帰宅、2時就寝であった。得意先の編集者と神保町界隈で、構想数ヶ月でようやく実現したというお食事会が催された。その席上で、ごく最近に会社の飲み会の2次会でカラオケへ行き、私が吉幾三のナンバーを唄ったらそっくりだったという話題になり、じゃあこの後も自慢のノドを、なんて展開に。結局、1時間だけカラオケに行って、『名古屋はええよ!やっとかめ』『浪花恋しぐれ』『Dream』『東京』『2億4千万の瞳』などを熱唱させていただいた。ちなみに吉幾三そっくりだったのは、単に飲み会で大声になり声を枯らしたからである。
      ……そんなわけで、上野までの車中は座りたかったのだが、致し方ない。1本後の列車も15両編成なのだが、それでは東京駅からの高速バスに間に合わない。ドアと座席の角に身を寄せて“立ち寝”を試みるのは平日と同様で、なんだか哀しい。

  • 9:28 [上野]5番線着。高崎線を降りた人の流れの大部分は3・4番線に向かい、秋葉原・東京方面を目指す。 9:32 私も京浜東北線に乗車、 9:40 東京で下車。 東京駅八重洲南口BTにて 南通路から京葉線に向かって右へそれていく人の波と分かれて、八重洲南口を出れば、目の前は高速バスターミナル。乗り場が4つしかないのに、東名道(東名ハイウェイバス)・常磐道(つくば・水戸方面)・東関東道(佐原・鹿嶋方面)を中心に、大型バスがひっきりなしに出入りする。私が乗る〔房総なのはな3号〕は10:00発だが、同時刻には他につくばセンター行・水海道行・江戸川台行・鹿島神宮行・超特急“スーパーライナー”名古屋行の6本が、さらにその10分後はつくばセンター行・江戸崎行・松伏行・急行名古屋行・“東海道昼特急”大阪行の5本が発車することになっている。特に東名ハイウェイバスは、超特急便以外は先着順で乗れるので、すでに長蛇の列ができている。午前中はこれから出かける人で、夕方は東京で遊んで帰る人で、そして夜遅くには夜行バスに乗る人で、八重洲南口のバスターミナルは一日中ごった返しているのだ。
      私は指定券を持っているので、列に並ばなくてもいいのだが、とりあえず4番乗り場の「安房白浜行」の列に並んでいると、「間もなく3番乗り場には、10時ちょうど発〔房総なのはな3号〕安房白浜行の1号車が入ります」と、バスの出入りを整理している“駅員”がワイヤレスマイクで構内放送。4番乗り場ではないのかと思ったら、4番には2号車が入るんだそうで、なんと2両運行。列を離れて、きっぷ売り場前の売店で飲み物を購入、3番乗り場に停まった1号車に乗り込む。車内の座席は4列で、後ろにトイレがついている。自席は左寄り通路側のB席だが、最初の停留所である上総湊で降りるのだから、通路側の方が好都合である。胸ポケットの携帯ラジオでbayfmのTraffic Updates(交通情報)を聴いてみる。下り線は、東名高速や京葉道路が混み始めているようだが、このバスの進路に目立った渋滞はないらしい。
  • 10:00 2台ともほぼ満席になって、〔房総なのはな3号〕は[東京駅八重洲南口]を後にした。ここからレインボーブリッジと東京湾アクアラインを通り、館山道に乗ったり一般道へ下りたりしながら上総湊・竹岡・富山・館山・千倉を経て安房白浜に至る、全行程2.5〜3時間の旅。京橋ランプから首都高速都心環状線(外回り)へ入り、鴨川日東バス・御宿行の後ろについて走る。……御宿行なんてバスターミナルにいたかな? と思ったが実は浜松町始発で、八重洲南口BTから外堀通りをはさんだ向かい側(ドコモショップ前)に乗り場があるらしい。
      TBSテレビのお天気カメラでもおなじみの浜崎橋JCTから1号羽田線、すぐに左へ車線変更して芝浦JCTから11号台場線へ。満員のゆりかもめと併走しながら、首都高速は臨港道路《※1》やゆりかもめの上を走り、レインボーブリッジを快調に渡る。パレットタウンの大観覧車を正面に見ながら、有明JCTで湾岸線に合流。東京港トンネルでは交通量が多くなりスピードが落ちてきたが、じきにトンネルを抜けて大井JCT、左には東海道新幹線の車両基地。城南島から京浜島を過ぎてまた突入するトンネルは、空港北トンネル。羽田空港の敷地内は切通しなので、右手にビッグバードは見えないが、左手には新たなターミナルビルを建設しているようである。
      湾岸環八ランプを過ぎて、またまたトンネル。通路をはさんで隣に座る夫婦は「ここから海ほたるまでが長いんだよ」などとしゃべっているが、まだ多摩川をくぐっているだけ。「この先は別料金」という看板の合間に「神奈川県」という標識が出て、湾岸川崎の本線料金所の渋滞に巻き込まれるが、トンネルを出たところで左にそれて川崎浮島JCT。右へ左へくねくね走り、急勾配の下り坂を駆け下りれば、いよいよ東京湾アクアラインの地下部分。坂を下りきったらほぼまっすぐで、疲れ気味で運転したら眠くなってしまいそう。いつの間に追い抜いていたのか、さっきまで前を走っていた御宿行のバスに追い越されながら、前方に上り坂が見えてきた。

    海ほたるバス停
  • 10:32 「お手洗いのみの休憩でございます、10:40までにバスへお戻りください。お手洗いは前方の階段を下りたところにございます、上の方(レストラン街や展望デッキなど)へは行かれないようお願いします」という運転手さんのアナウンスが流れて、海ほたるPAでトイレ休憩。……今気づいた、海ほたるってSAじゃないのか。でもPHSは圏内になっている。展望デッキから360度の展望を楽しもうにも、夏場のうすぐもりで四方がかすんでいるから、空気が澄み切った冬場にしようか。でも海の真ん中で木枯らしに晒されるのはつらいものがあるな。
      このバスが停まった目の前には路線バスの「海ほたる」木更津方面行バス停があり(写真右→)、しかも待合室ブースつき。建物をはさんで反対側には川崎方面行のバス停もある。ちょうどそのバス停にやってきた木更津行のバスは、いわゆる高速バスタイプ。高速道路を走るから、立って乗れないのである。無論、つり革はない。しかし19:57の終バスを逃したら大変だ。自分の不注意で乗り遅れるのならともかく、満員で乗れなかったら悲劇である。まさか歩いては行けないし、木更津からタクシーを呼ぶか、ヒッチハイクを試みるしかなさそう。それとも、運転手が営業所へ連絡して、ワゴン車か何かで迎えに来てくれるのだろうか??
  • 10:40 時間どおりに全員揃って、出発。「上りの運転手に聞きましたところ、高速を下りてからの一般道が混雑しているようです。到着時間が変更になるおそれがありますので、予めご了承ください」と、きめ細やかな案内放送。アクアラインから連絡道を順調に通り過ぎ、館山道を木更津南ICで下りて国道127号線へ入ったとたんに交通量が増えて、スピードも落ちた。一山越えて君津の市街地を通り抜けて、もう一山にさしかかったところでトンネル。その大佐和トンネルを抜けて富津市に入ったら、すっかりノロノロ状態になった。暇つぶしにラジオを聴くが、bayfmはエンジンに起因する「キュイーン」というノイズでよく聞こえない。埼玉県戸田市に送信所があるTBSラジオや、川口市から電波を飛ばす文化放送は、このあたりでは電波が弱くてバスの中ではよく聞こえない。木更津に送信所があるニッポン放送だけはよく聞こえる。11:00から始まった「アッコのいいかげんに1000回」は聴いたことがなく、聴きたいと思ったこともなかったが、この際なのでなんとなく聞き流してみる。
      右前方に浦賀水道が見えてきたところで、「間もなく上総湊駅前に到着します。お降りの方は、お手近のブザーボタンでお知らせください」とテープアナウンスが流れた。前方では乗客のおばちゃんが、袋菓子のせんべいや飴を手当たり次第に配っているが、その意図はまったく不明。バスツアーだったら、参加するおばちゃんらはほぼ全員がおやつを用意していて、配る相手が知人であろうがなかろうが、車中はさまざまなお菓子・おやつが飛び交うらしいのだが。

    高速バスの上総湊駅前バス停
  • 11:35 定刻より約10分遅れて、[busstop上総湊駅前]に到着。ここで降りたのは、1号車では私一人だけだった。下車したところにバスポールはなく、上り車線側にだけ立っている。目の前には、コンビニとガソリンスタンドが肩を寄せ合って営業している。GSに出入りするにはコンビニの駐車場を横切らなければいけないほど、両者は近接しているのだが、提携とはいかないまでも共存共栄しているのだろう。走り去ったバスの後を追うように国道を南へ進めば、コンビニの周りに飲食店が集中している。カレー、ラーメン、うどん・そば、お好み焼き・もんじゃ、寿司、イタリアンなどなど。この後合流する人と昼食をとるならどこにしようか、と店構えを眺めながら、南向きに歩く。……歩くのだが、駅が見えてこない。曲がりなりにも「駅前」を名乗るバス停から、道一本入った先に駅舎の屋根だけでも見えなければおかしいのだが、国道から脇に入ったところにある富津市民会館がどっしりとひっそりと立っているだけで、駅が見えない。

    JR上総湊駅   ようやく、200mくらい歩いた先には信号のついた交差点があり、片側1車線でさして広くもない国道を渡るための歩道橋が。近くに小学校があるわけでもないのに、こんな狭い道に歩道橋を架けようと考えたのは誰だろう。……ともかく、歩道橋でしか国道を横切れない「駅入口」交差点を右に折れれば、電器店・写真屋さん・美容院・食堂など、田舎らしい駅前通りがあって、JR上総湊駅前のロータリーに到達。平屋建ての小ぢんまりとした駅で、東京から98.1kmというが、高崎や宇都宮と同距離とは信じがたい。

  • 11:45 駅の軒下にある売店で、千葉日報を買い求める(100円)。1面のトップ記事は、子育て支援 需要調査へ 県と市町村が行動計画 サービス量把握図る」というもの。それから「辻元衆院議員を逮捕」「アクアライン ETC割引を来年3月まで再延長」などなど。地方紙ならではの、これぞ!という記事は見当たらなかったが、スポーツ面のトップは千葉ロッテマリーンズで期待を裏切らなかった。

    上総湊駅に到着するさざなみ7号
  • 12:01 定刻より2分ほど遅れて、特急型電車が[上総湊]の駅に入ってきた。東京10:30発、京葉線回りの特急さざなみ7号で、君津まで特急運転した後はそのまま普通列車(全車自由席)館山行になるのだ。“本隊”は君津で普通列車からこれに乗り換えて上総湊入りすることになっている。……なぜ私が一緒に来なかったのか? 理由は、以下の3点。(1)バスの方がほんの少し遅く家を出られる。(2)定期券で乗り越すよりもバスの方が安い。(3)行き帰りでルートに変化をつけたかった。特にレインボーブリッジとアクアラインは面白そう。(2)については、定期券が有効な日暮里から上総湊までが100.5kmで、0.5kmに泣いて1620円から1890円へはね上がるという運賃表のめぐり合わせがあるのだが、きっぷを千葉で分ければ250円安くなるとか、日暮里〜千葉間を京成に乗ればさらに170円安くなるとか、やりようはいくらでもある。でもまあ、そういう知恵は復路に活かすとして、往路は乗り換えなしのバスの旅を楽しむことにしたのである。

    上総湊駅に降り立った“本隊”   列車が去ったホームに、見覚えのある顔がいた。出口に向かいながら周囲をきょろきょろ見回しているどろっぷ氏が、駅の外でカメラを向けている私に気づくのにそれほど時間はかからなかった。やがて、屋根のない跨線橋を渡って改札口にたどり着いた“本隊”は総勢4名。今回の旅の言いだしっぺどろっぷ氏に、さいたま市ツアーでもご一緒いただいたハナサン氏、そして元KRC大谷内肇氏と、どろっぷ氏の大学の先輩・しーさる氏。ハナサンに敬称を付けると「アグネス=チャンさん」みたいに不恰好な言葉になってしまうが、付けなきゃ付けないで申し訳ないので、ご勘弁願いたい。

      さて、今さらながら、なぜ私こと東雲は、上総湊へやってきたのか? この旅の趣旨説明。

      事の発端は、どろっぷ氏がPlayStationのゲームソフト『Lの季節』《※2》の登場人物の一人・天羽碧(あそう みどり)にすっかり入れ込んでしまった4年前。それはそれは大変な入れ込みようで、勤め先に提出する年末調整書類の「配偶者」欄で「有」にマルを付けてしまいそうになったとか。……キモイって言うな! これは純愛なのだ。
      それはそうと2002年の7月頃に、千葉県富津市の上総湊駅周辺に「天羽(あまは)」という名がついた施設が集まっているのを、どろっぷ氏が発見。その時はちょうど彼女の設定上のお誕生日・7月19日を過ぎたばかりだったが、幸いなことに翌年(2003年)のお誕生日が土曜日にあたるので、聖地巡礼《※3》を思い立ち、自身の日記で決意表明。学生時代には日本全国津々浦々「東雲」という地名を訪ね歩いていたので、「その気持ち、わかります。ついて行ってもいいですか? 国旅主義のネタにもなるし」とメールで参加表明。するとどろっぷ氏は「別に無理して来る必要はないですが」と前置きしながらもサイトで行程を発表、それを見た有志が当日次々と参集し、総勢4名で上総湊へ乗り込んできたのである。

      ……こうして“本隊”4名に、26分早く現地入りした自称“先遣隊”1名が合流して、いよいよ「天羽」を訪ねる旅が佳境を迎える。



    《※1》臨港道路……レインボーブリッジは2層になっていて、上の層を首都高速11号台場線が、下の層の外側は一般道路の“臨港道路”が、そしてその内側をゆりかもめの軌道が走っている。だからゆりかもめからの車窓がいちばん見づらい。管理しているのは東京都建設局ではなく東京都港湾局なのでいわゆる「都道」ではなく、港湾連絡の産業用道路という位置づけで、道路法が適用されないらしい。

    《※2》『Lの季節』……1999年8月にリリースされた、PlayStation対応“デジタルノベル”ソフト。発売元のトンキンハウスのURLを見たら「tokyo-shoseki.co.jp」……東京書籍!? “トンキンハウス”はブランド名で、会社名は「(株)東京書籍メディアフロー」。私はこのゲームの存在を知らなかったので、どんなゲームかなのという説明は、二級抹茶さんのページが見つかったので、どうぞ。

    《※3》聖地巡礼……アニメやコミック、ゲームなどの舞台となる土地(架空の地なら、モチーフにされたと思われる場所)、特にストーリー中に出てくるスポットを実際に訪れて、感慨にふける旅のこと。あるいは、自分が入れ込んでいる登場人物の名と同じ地名を訪ねたり、同じ名を持つ列車に乗ったりして、ある種の“絆”を感じてみる旅。アニメ・ゲームマニアと鉄道・汽車旅愛好家の両方をかけもちしている“兼業マニア”が意外に多いので、旅のテーマがネタ切れになったときはこういう道楽に走る人が少なくない。なお、私が学生時代にやっていた「東雲つぶし」は、自分でつけた芸名に由来するので、“聖地巡礼”とは一線を画する。


    【その2】本隊と合流、歩き出すNEXT
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