東雲の親孝行計画・やすらぎの栃木路
 (1998年11月7日〜8日・1泊2日)

【9月下旬】
 せっかくクルマの免許を取ったのだから、どこかへドライブに行きたい。

 9月1日にめでたく第1種普通自動車運転免許の交付を受けてからは、鐵分過剰な私でもそう思い始めた。

 鉄研の同輩が、他の鉄研会員を誘って(ときどき拉致して)あちらこちらへ夜行ドライブに出かけるのだが、免許がないうちは「私には無縁なもの」と思って遠慮していた。しかしながら、免許を取った以上は運転したいの一心で、クルマを持っていない私のほうからドライブへ誘うようになってしまった。

 たまたま大学へクルマできていた鉄研の同輩A君が、「クルマで家まで送ろうか?」という代わりに“第5段階”《※1》やりますか?」とうやうやしく問い掛けてきたので、ひとかけらの躊躇もなくGOサインを出してしまった。その夜は、免許取得以来初めての運転だったため、北本市内で国道を外れたところから鴻巣市内の自宅まで、約4kmだけ。交通量が少なかったからよかったものの、はじめの1kmくらいを無灯火で走ってしまい、助手席のA君を大いに驚嘆させたのもご愛敬。とにかく、夜間の初運転は無事終了。一度ハンドルを握ってからは、「ドライブ行きたい」熱は冷めるどころか、じりじり上昇傾向であった。

 それからしばらくして、家族をドライブに連れ出すことを思い立った。両親は二人きりでよくバスツアーに参加したり、観劇に出かけたりしているが、弟はすでに就職し、その仕事柄土休日には休めず。私は一人で勝手にフラフラと出かけていたから、親子で出かけるということを久しくしていなかった。家族4人は揃わなくても、両親を乗せてあちこち連れ回して、数年ぶりの親孝行をしたい。

 “親孝行”という恩着せがましい言い方こそしないが、両親に日帰りドライブの話を持ち掛けてみた。旅行といえば一人でどこかへ行ってしまう倅(せがれ)が、いきなり一緒に出かけようと切り出したので「ホントにぃ?」と半信半疑でニヤニヤしていたが、それでも反応は上々。共働きの両親も、そして私も、スケジュールを開けられるようにと、1ヶ月以上後の11月7日(土)を決行日とした。


【10月下旬】
 目的地はどうする? ……やっぱり群馬でしょう!?

 晩秋に出かけるなら、やはり紅葉を見に行くに限る。自宅がある埼玉県鴻巣市から、群馬県高崎市までおよそ50km。それほど長距離でもない。やはり行き先は上毛三山あたりがよかろう。今年は秋になっても気温の低下が鈍いので紅葉が遅いらしいが、それなら山の奥へ入っていけばよい。

 中山道を下る形で国道17号から18号へ。妙義山の北麓の妙義神社あたりで紅葉を眺め、それから磯部温泉でさっと一風呂。ついでに長野新幹線の安中榛名駅《※2》まで行き、峠の釜めし《※3》をみんなで食べて、帰ってくる。ざっとこんな感じで、日帰りでもゆっくりできるはずである。あとは、決行日が晴れて紅葉が美しいことを祈るのみ、……であったのだが。


《※1》“第5段階”……教習所での教習内容は、学科と技能の2本立て。技能教習は、第1〜第4の4段階に分かれている。それをもじって、免許取得後(自主的に)運転の練習をやることをそう表現した。

《※2》安中榛名駅……群馬県安中市の北の外れの山の中にある長野新幹線の独立駅で、在来線は通っていない。当初の計画では高崎〜軽井沢間には駅を設けないはずだったが、群馬県が「せっかく県内を通っているのに駅がないなんて」と注文をつけたおかげでできちゃった駅。ちなみに安中市街からは、1日9往復しか停まらない安中榛名駅よりも、高崎駅へ出た方が近くて速く、さらに上越新幹線や高崎線も利用できるので、安中市民は安中榛名駅をあまり利用しないらしい。

《※3》峠の釜めし……JR信越線の横川駅で販売されていた、日本一有名な駅弁。長野新幹線の開通に伴い、在来線の横川〜軽井沢間が廃止されたが、釜めしの販売は横川駅前の「おぎのや本店」と、駅裏手の「おぎのやドライブイン」で続いている。その他にも、長野新幹線の車内販売と軽井沢駅・安中榛名駅、上信越自動車道:横川SAでも販売されている。

【その2】見込みが大幅に狂うNEXT
TOP【国旅主義・目次】へ 臨海亭東雲