【4/17(日)】路面電車×GPS×すごろく
7時半に起床。よく晴れているが、ホテルの部屋のガラス窓には露がついており、時ならぬ冷え込みの朝である。そういえば前夜はお好み焼きを食べて帰ってきて、デザートまできっちり食べたものの、旅の疲れで二人ともバタンキュー状態だった。朝食バイキングが8:45までなので、あまりグズグズしていられない。シャワーを浴びて、ひげを剃る。さっぱりしたところで妻を起こしてシャワーへ送り込む。備え付けのドライヤーが非力で、髪がぜんぜん乾かない、と妻は嘆く。
8:15、朝食バイキングの会場“春日”へ。入り口まで行くと係の方があいてる席を指して「“春日”のここ、あいてますよ」なんて言うんかなー、まぁ言わねえだろうなー、とか軽口をたたきながら入っていくと、100名以上収容できそうな宴会場“春日”の右手壁沿いに、手前に洋食、奥に和食が並んでいる。チチヤスヨーグルトが並べてあるのを見つけて、やっぱり広島だなぁと妙な実感。まずは洋食とパン・スープで一皿、皿をかえて和食にごはん・みそ汁でも一皿。時間ギリギリまで食べ続け、会場を後にしたときには最後の一組になってしまった。旅先の朝食はついつい張り切って食べてしまう。
部屋に戻って食休みしながら荷物をまとめて、10時過ぎにチェックアウト。ホテルのフロントで、広電一日乗車券を買い求める。今日は第9回「広探ゲーム」の開催当日。10:30に広島駅南口に集合、とのこと。旅の荷物を、駅ビル1階東側のコインロッカーに預けていく。今日の広島×巨人戦はデーゲームのようで、駅ビルの軒下には早くも応援グッズや軽食を売るワゴンが出ている。
集合場所で、広探ゲームプロジェクトメンバーの佐藤さん(男性)と合流、広探ゲームの参加者の証として胸に貼るステッカー(写真右)と名札を受け取る。ほかのプロジェクトメンバーの方も、一般参加者の方も、中国新聞の記者(?)の方も三々五々集まってきて、参加者は合わせて14名(うち子ども2名)となった。2回目、3回目というリピーターもいるかと思えば、昨夏のリアル桃鉄USTREAM実況を広島で見ていたとおっしゃる方も。さすがに県外から来た参加者は、私と妻の2人だけだった。「れもんチーム」「みかんチーム」「でこぽんチーム」の3つにチーム分けして、私と妻はみかんチームへ、佐藤さんとkamawiさん(女性)・たかたさん(男性)と共に5名編成となった。お三方はそれぞれweb関連のお仕事をなさっているそうで、広島で定期的に開催されている勉強会を通じて知り合い、その場から「広探ゲーム」の構想も生まれてきたのだという。
「リアル桃鉄」では、サイコロ・フリーきっぷ・貧乏神Tシャツ・カードリスト・所定の食糧など、持ち物がいっぱい必要だが、「広探ゲーム」で必要なのは、GPS機能付き携帯電話・広電一日乗車券・ゴミ袋、それと記録用のカメラ(携帯のカメラ機能でも可)に、少々のお金だけ。サイコロも指令も、携帯電話の画面に出てくるから、操作はラクである。ただ、DoCoMoの携帯電話はGPSの位置情報取得にやたら時間がかかるので、早々にiPhoneへ交換した。
比較ついでにもう一つ、「リアル桃鉄」は、朝のゲーム開始時点では各チーム任意の地点から、ゲームマスターが発表する目的地に向かい、1チームが目的地に到着したら次の目的地が発表されるという形式だが、「広探ゲーム」はすごろくに準じており、スタートもゴールも各チーム同じ。今回のスタート地点は広島駅前(M 1)で、ここから2号線(広島駅前〜原爆ドーム前〜西広島〜広電宮島口)に沿って広電西広島(M 19)を目指す。……広島電鉄も駅ナンバリングを導入しており、2号線に沿って宮島の“M”を冠した番号が振られているが、紙屋町東と紙屋町西は同じM 9になっており、もともと“紙屋町”という一つの停留所扱いだった名残りが見られる。
午前11時にゲーム開始。一般的なすごろくなら、まずはサイコロを振って何マスか進むのだが、広探ゲームは広島駅前(M 1)で最初の指令が出る。携帯の画面に1・2・3の数字が出てきて、一つを選ぶと指令が一つ出てくる。……新幹線が広島に到達してもう何十年もたつのに、駅前にはこんな空間が残っているのか、という“愛友市場”へ行くという指令が出てきた。日曜の午前中ということで、ほとんどの店のシャッターが下りていて、新幹線の駅から徒歩3分というわりには閑散としているが、まさか“神社”と称する施設までシャッターを下ろしているとは……
愛友市場での指令も一応クリアし、ようやく電車一日乗車券を取り出す……その前に、携帯で「指令をクリア」というリンクを開いて、現在地確認のために位置情報を送信すれば、また1・2・3の数字が出てくる。一つ選べば、「4が出ました! 銀山町へ進んでください」と、下車駅を明示してくれる。すごろくのルートは2号線をたどるが、ゲーム上も一日乗車券も路線の制約はなく、1号線広島港行きでも6号線江波行きでも、来た電車に乗ればよい。ちなみに、広島駅から西広島まで20駅、あっという間にゴールしてしまわないよう、サイコロの目はプログラム上で調節しているんだとか。
銀山町(M 5)で下車。指令は「銀山町●番地の△△という店で記念撮影せよ」。リアル桃鉄は電子的に検索するのを認めていないが、広探ゲームはそこらへんに制限はない。各自が持っている携帯電話で地図検索し、「もう一本向こうの道だな」とか言いながら、電車通りから脇へ入っていく。広探ゲーム公式サイトでは、細かい指令内容を「実際に参加したときのお楽しみ」としてあまりつまびらかにしないので、ここでもそれにならうが、地元広島に暮らす方でも「こんな店あったんだぁ!」と楽しい新鮮な発見があるようだ。
銀山町での指令をクリアしてサイコロ三択したら、「1」の目。1つ先の胡町(M 6)は数百m先に見えており、電車を待つのもばかばかしいと歩いてしまい、指令に従って目の前の三越へ。埼玉県神川町産の「松田のマヨネーズ(写真右)」が置いてあった。
胡町で「3」の目を出して、紙屋町東(M 9)へ。……ひとつ手前の立町(M 8)電停前には広探ゲーム協力店の一つ・東急ハンズ広島店があり、お店独自の指令を出してくれるのだが、今回は我々を含め全チームが立町電停に降り立つことがなかった。広島店のtwitterアカウント(@Hands_Hiroshima)もゲームのなりゆきを見守りながら “全チーム立町に止まらなかったんじゃね…(泣” “あ、戻すカードとかあるんじゃね。…ちょっと不幸を願うみたいでアレじゃけど、誰か戻ってー(笑 ” とサイの目の不運を嘆いていた。
三越の次はそごうにも立ち寄るはめになった。地下の食料品・和洋菓子フロアの一角に広島県産品を扱うコーナーがあり、広島みやげのアドバイスをいただく。ひときわ目立つ「はっさく大福」ののぼり旗が気になり、みんなで食べてみようということに。大福の中には因島産のはっさくのシャキシャキした果肉がゴロリと入っていて、それが白あんと絶妙にマッチして美味しい。生のフルーツを使ったこういうお菓子は、東京など遠隔地のアンテナショップにもなかなか並ばない、まさに隠れた逸品である。
サイコロの目は「2」、原爆ドーム前(M 10)と出たが、佐藤さんが「食事せよという指令が出ないかもしれないから、自主的にランチにしましょう」と提案。お好み焼きは昨晩食べたので、広島つけ麺のお店へ連れてっていただく。広島市を中心に20店舗以上、東京にも赤坂と六本木に出店している“ばくだん屋”という広島つけ麺のお店のフランチャイズで、ラーメンにも力を入れている“藤原ラーメン”へ。爆心地のすぐそばで“ばくだん屋”という屋号が憚られるから“藤原ラーメン”にした、という説を佐藤さんが披露してくれたが、どうなんでしょ。
まぁともかく、ラーメンも出す店ではあるがお目当ては「つけ麺」。麺にはゆでキャベツときゅうりとネギが乗っている。汁は魚介のだしをベースに酸味と辛味がきいていて、白ゴマがたっぷり浮かべてある。東京で日常的に出会うつけ麺は汁が温かい(わざわざ焼き石を入れて冷めないようにする店もあるくらい)のだが、ここのつけ麺は麺だけでなく汁もよく冷やしてある。辛さは調節可能で、私はベーシックな2倍、辛さに強い妻は10倍を、たかたさんはなんと200倍をオーダー。辛さを調節するタレも大量になるとみえて、出てきた汁の器が一回り大きかった(写真右=左から辛さ2倍・10倍・200倍)。kamawiさんは汁なし坦々麺を注文、それもうまそう。
自主的昼食をおいしく平らげたら、そのまま徒歩で橋を渡って平和記念公園へ……と思ったが、出された指令をよく見ると「中央公園」とある。電車通りの南側にある川の中州が平和記念公園、電車通りの北側、旧・広島市民球場があったのが中央公園。ちょうど原爆ドームの脇を通るので、観光客らしく撮っていただいた(写真左)。
解体作業が進む旧・広島市民球場を眺めながら、中央公園で指令を遂行し、さて先に進もうかと思って携帯画面を開いたら、「みかんチームは2駅戻って紙屋町東へ」と指令が。他のチームが、指令をこなすたびに貯まる仮想通貨“ヒム”で「2駅戻すカード」を買って、攻撃を仕掛けてきたらしい。カードを買える駅というのが決められていて、手持ちの“ヒム”に応じてカードを買って、他のチームを後戻りさせたり、所持金を全チーム均一にしたり、他チームからカードを奪ったり、というアクションも用意されている。我々も後でカード駅に停まったとき「2駅戻るカード」を購入して、さっき仕掛けてきたチームに反撃したのであった。
そんなわけで、また紙屋町東(M 9)。またデパートの地下をうろついて、また広島名物をいただく。こんどは“川通り餅”、きな粉をまぶしたゆべしみたいなお菓子。長方形の箱ではなく、紙1枚を折り上げた厚みのあるパッケージがなかなか洒落ている。
紙屋町東(M 9)で指令を終えると、画面に現れる「分岐チャーンス!」の文字。本線をずんずん進みたいのに、分岐駅に停まったばっかりに支線へそれて行ってしまうチャンス。さっき紙屋町東にいたときは分岐を回避できたが、今回は「当たり」を引き当ててしまい、広電本社前・宇品方面へ入っていくことになってしまった。それでもサイコロの目は「2」で、傷は浅い。もちろん支線の各停留所でも指令は用意されており、紙屋町から2つ目の袋町(U 2)では、とある資料館を訪ねる指令が出た。なかなか奥が深い町であり、それを発掘させてくれる広探ゲームのクオリティの高さに敬服する。
支線上に居ると、指令を遂行した後に「反転チャーンス!」が出て、本線へ戻れるかどうかの抽せんが行われる。前回の第8回広探ゲームでは、反転チャンスに恵まれず、広探史上初めて広島港(U 18)へ行き着いてしまったチームが出たというが……、めでたく「反転に成功!」と本線復帰のお許しを得た。他チームからは “開発者にはやけに甘いじゃないのよう!” とブーイングも寄せられたが、とにかくサイコロの目は「2」、紙屋町西(M 9)。今日何度目かの紙屋町である。ここでの指令は「○○屋で食事をしよう」だったが、さっきつけ麺をいただいたばかりなので、そごうの隣にある広島バスセンターの土産物店で代用品を購入、6個1セットになっているうちの1個を開けてみんなで試食。残り5箱は東京へのおみやげにさせていただく。
紙屋町西でサイの目に「4」が出たので、途中の本川町(M 11)で、電車を降りたばかりの れもんチームと遭遇して写真を撮り合うハプニングもありつつ、一気に土橋(M 13)へ。指令をあっという間にこなしたと思ったら、また1駅戻され、十日市町(M 12)へ徒歩移動。ここで、たかたさんが私用のため離脱、逆方向の電車に乗って行った。
十日市町から3つ進んで、天満町(M 15)。ここ天満町から己斐(現・広電西広島)までは、原爆投下の3日後から電車が復旧し、広島復興の礎とされたという。その天満町電停の目の前に“ハイデルベルグ”という洋菓子店が立っている。その店名、まさか印刷機メーカーから取ったわけではないだろうが、印刷会社に勤める私だけでなく、現職の前は印刷会社に勤めていたというkamawiさんも、ピンときてしまった。「シュークリームを焼き続けて60余年!」と店先に手書きの看板を出してあるので、みんなでシュークリームを買い食い。
天満町よりも一つ手前の小網町電停の方が近い“広電天満橋”は天満川にかかる橋で、歩道も併設されている。その橋の上で写真などを撮っているうちに、妻が一日乗車券をなくしたという。昼を過ぎて風が強くなってきて、首からさげていた名札が風で振り回されるうちに、名札の後ろにさしておいた一日乗車券が落ちてしまったようだ。まぁ残り駅数は4つなので、うまくすれば一発ゴールも可能。改めて一日乗車券を買い直すことなく、現金払い(150円)で先に進むとしよう……と思ったが、出目は「1」で観音町(M 16)。他の2チームはすでにゴールして、西広島のミスタードーナツで一息ついているらしいが、ここへきて東雲の持ち前の「出目のしょぼさ」が現出してしまったか。
市の中心部からちょっと離れた街頭で、ちょっと恥ずかし系な指令をこなして、さぁ残り3駅!
「1が出ました。西観音町へ進んで下さい」
なんと連続で「1」を引き当ててしまった! 電停間の距離がちょっと長くなってきたような気もするが、電車を待たずに西観音町(M 17)まで歩く。さっきまで暑いくらいだったのに、雲が出てきて涼しくなってきた。われわれみかんチームの行く手に暗雲が……と言っても他の2チームはもうゴールしてるわけで、もう戻される心配もない。前進あるのみ。こんな写真でよければ、いくらでもポーズをきめてやる……
さあ、サイコロを振るぞ。選択肢は1・2・3の3つの数字。まさか「1」の出目が2つ入っているとは考えにくく、3分の2の確率でゴールできるはず。僕たち、かなり広島を満喫したよね……
「1が出ました。福島町へ進んで下さい」
まさかの3連続「1」! 勝手に牛歩カード! さすがに妻からグーでどつかれた。出目がしょぼいにも程がある。平和大通りはかなり広い道なので、福島町(M 18)は比較的近くに見える。やっぱり歩く。
この流れで一発ネタ系の指令が出れば、とっととゴールできるのだが、最後の最後に“足で探す”系の指令が。でもこれはこれでいい収穫だったので、次回以降の広探ゲームに反映されるのではないかと期待。佐藤さんは、待たせている他の2チームに配慮してか、歩き回る様子を“ツイキャス”で生中継している。
福島町(M 18)での指令もクリアし、サイコロ画面。以前は残り2駅で「3」とか出て、まさかの宮島線突入というプログラムの不具合があったそうだが、もうそんなバグはなく、「1」で西広島ゴールが確定。新己斐橋を渡るので駅間がちょっと長いが、橋を渡った先の交差点で待たされがちなので、とまたまた徒歩移動。時刻は16:22、一番にゴールしたチームから1時間ほど遅れて、わが みかんチームも無事に広電西広島(M 19)へゴールした。ゴール後の携帯画面には、締切時刻(17:00)までの残り時間がタイムボーナスとして所持金に加算され、最終成績では(カードを買うだけ買って使わなかった某チームを上回り)2位になった。
先着2チームの皆さんもミスドから出てきて、第9回広探ゲームが無事終了。時間がある人は広電西広島の駅構内にあるベーカリーカフェへ移動し、打ち上げも兼ねてしばし茶飲み話となった。今日の反省もそこそこに、話題はwebとかSNSとかゲームとか中央vs地方とか、やっぱり社会人だからビジネスの話になるよね。
話し込んでいるうちに、時計の針は6時を過ぎていた。名残り惜しいが、妻と私は7時半の新幹線で東京へ帰らねばならぬ。荷物も広島駅のコインロッカーに預けてあるし……あ、名刺入れもロッカーの中だ。そんな間抜けなダンナの隣で妻が名刺交換している。「家に帰るまでが広探ゲームですよ(笑)」というお言葉を頂戴して、広探の皆さんに御礼申し上げてお店を出る。ここから広電で広島駅まで戻ると30分以上かかってしまうので、隣接するJR西広島駅から山陽線で広島へ。スムーズに走れば2駅を7〜8分で走るのだが、横川駅で可部線の下り列車が前を横切るので4分停車。11分かかって広島駅に到着。南口改札を出て、コインロッカーから荷物を取り出して、おみやげを買い足して、それからkamawiさんに勧められた田中食品の「カープふりかけ 前田の好きな旅行の友」も自宅用に購入。駅で食事するヒマがなさそうなので、駅弁を買おうと思ったが、南口改札外の駅弁スタンドは軒並み売り切れ。新幹線改札内で「あなごめし」と「天むす御膳」を買って、19:33発〔のぞみ64号〕に乗り込んだ。
……あ、そういえば牡蠣を食べなかったなぁー。
せめて締めくくりに、駅弁の“かきめし”とか食べたかったなぁー……
【後日談】広探ゲーム×リアル桃鉄 @トークバトル
私たちが広探ゲームを楽しんだ1週間後、東京都江東区青海の東京カルチャーカルチャーで「東日本大震災復興支援 鉄な位置ゲー トークバトル 〜乗り鉄の新たな楽しみ〜」が開催された。広探ゲームのプロジェクトメンバーからは、佐藤さんではなく、当日あんまりお話しできなかったバシケンさんが単身乗り込んできた。当日、開演15分前に会場へ入ってみれば、バシケンさんはリアル桃鉄チームの面々と同じテーブルですっかり打ち解けていたようだが、それでも「(先週会ったばかりだけど)知ってる人が客席にいてくれたので、心強かった」とおっしゃって下さった。しーなねこ氏の「広探ゲームは前向き、リアル桃鉄は後ろ向き」(笑) という正直すぎる感想が、聴衆や他のパネラー、そしてUSTREAM生中継を見ていた方々の胸に少なからず刻まれたようである。同所で引き続き行われた懇親会では、他の参加者から引っ張りだこだったようで、当人も「(twitterの)フォロワーが10人増えた」とまんざらでもない様子。
さて、今年のリアル桃鉄は、どうなっちゃうんだろうか?
広探ゲームとのコラボレーションは、実現するのだろうか?