月刊コラム page 26.

 年中盛り! 埼玉の“5月の花”は芝桜

月の花場所
1月ロウバイ宝登山(長瀞町)
2月越生梅林(越生町)
3月カタクリ芦ヶ久保(横瀬町)
4月権現堂(幸手市)
5月芝桜羊山公園(秩父市)
6月あじさい能護寺(妻沼町)
7月ラベンダーラベンダー堤(菖蒲町)
8月古代蓮古代蓮の里(行田市)
9月マンジュシャゲ巾着田(日高市)
10月冬桜城峰公園(神泉村)
11月紅葉中津峡(秩父市=旧大滝村
12月イルミネーションさいたま新都心(さいたま市)
(市町村名は2005年4月1日現在)
 もう5月に入りましたので、駅貼りのポスターは差し替わっているかもしれませんが、ピンクや白のじゅうたんを敷きつめたような“芝桜の丘”の写真がポスターになって、首都圏の駅頭に張り出されていたのをご覧になった方、いらっしゃいますかどうか。特に西武鉄道あたりは、秩父観光の新しい目玉として、去年あたりから芝桜を猛烈にプッシュし始めたようで、ラジオでもCMをバシバシ打っております。しかし、西武以外のたとえばJRの駅でも、「今、埼玉は花なんです!」というキャッチフレーズのようなものが入ったポスターが出ています。

 少々さかのぼりますが、2005年3月18日の新聞に「埼玉の花キャンペーン」に関する記事が載りました。4月5日の埼玉県知事定例記者会見でも、冒頭でふれられましたし、埼玉県ホームページの「知事の部屋」内でも、知事からのメッセージ「今、埼玉は花なんです!」という形で載っています。
 埼玉県内で、花の名所を訪れる観光客が増えてるんだそうです。また、私の実家がある鴻巣市をはじめ、川口の安行地区など、埼玉県は全国有数の花の生産地なのです。そこで、県内の地域のバランスを考えながら“月の花”を12種類ピックアップして、毎月ポスターを作って首都圏193の駅に張り出す、という観光キャンペーンなのです。その先陣を切って、5月の花である秩父の芝桜をポスターにして、……5月に張り出したのでは遅いですから4月の1ヶ月間、あちこちの駅に送って張り出してもらったのです。

 右の表にしてみましたけど、……花じゃないものが混じってます! 11月の「中津峡の紅葉」はまだしも、12月の「さいたま新都心のイルミネーション」は、OKなんでしょうか? まぁ“OK”だとしても、これをポスターにして11月に首都圏の主要駅へ配って、観光客をさいたま新都心へ呼ぼうとしても、イルミネーションでは六本木・汐留・横浜にかないっこないんですよ。秩父夜祭とか、大宮氷川神社の大湯祭(十日まち)とかをポスターにした方が、絶対に客は呼び込めると思うんですけどねぇ。花シリーズだから仕方ないんですけれども。

埼玉「月の花」地図
 12ヶ月の「月の花」の所在を、左のとおり地図にしてみました。地図上の丸数字が、その月の花の場所です。なるほど、地域に偏りがないように考慮されていますなぁ。しかしこれ以外にも県内の花の名所はまだまだたくさんあるわけでして、思いつくだけでも与野のバラ(さいたま市中央区)、牛島の藤(春日部市)に骨波田の藤(児玉町)に玉敷神社の大藤(騎西町)、桶川のベニバナに熊谷の桜堤、吹上町の荒川コスモス街道、浮野の里のノウルシに花しょうぶ(加須市)、利根川や荒川河川敷の菜の花、忘れちゃいけないサクラソウ自生地(さいたま市桜区)などなど。
 そんな中、5月の花になっている秩父市羊山公園の芝桜と、東松山駅のすぐそばにある箭弓(やきゅう)稲荷神社のぼたんを見に行ってきました。
秩父市羊山公園“芝桜の丘”

【秩父・羊山公園の“芝桜の丘”】

 出かけたのは5月3日。前々日に西武池袋駅で特急券を買い求めたところ、当初希望していた9:00発の列車は「喫煙席なら1つ空いている。それ以降は軒並み満席」ということなので、1本早めて8:30発の「ちちぶ11号」にしました。池袋から西武秩父まで、運賃750円+特急料金620円=合計1350円。池袋発車時点で、私が乗った5号車は半分以上が空席のままで、本当に満席なのかと疑わしくなりましたが、所沢で少年野球の団体がぞろぞろと乗り込み、車内はいっぺんに阿鼻叫喚の世界へ。秩父へ練習試合なんでしょうか。次の停車駅・入間市で、めでたくほぼ満席になりました。飯能を過ぎると、高麗川をはさんで右側に国道299号線が並行しますが、やはり交通量はかなり多く、ところどころ渋滞しています。やっぱり秩父へは列車で来るべきです。
 9:50、西武秩父着。すっかり晴れ渡っていますが、空気はひんやりしています。10時前だと言うのに、駅前は芝桜見物の観光客を中心に、大変な混雑です。ここから羊山公園“芝桜の丘”へは、たらたら歩いて20分。人が多いので、サクサク歩けません。駅前でもらった地図を見ると、西武秩父駅からは「牧水の滝コース」と「急坂コース」の2通りがあります。羊山公園へ向かうなら、間違いなく「牧水の滝コース」をお勧めします。札所12番野坂寺の裏を登っていく「急坂コース」は、看板に偽りなしの急坂です。私は「牧水の滝コース」を登り「急坂コース」を下りましたが、下って緊張する急坂は久しぶりでした。いっそ石段にすればいいのに。
斑入りの芝桜「多摩の流れ」
 羊山公園といっても広うござんす。公園の南端に位置する“芝桜の丘”は、約14,500m2のスペースに333,000株の芝桜が植わっているそうです。芝桜日本一をうたう北海道・滝上町(たきのうえちょう)の滝上公園は100,000m2ですから、それには及ばないものの、結構な見ごたえです。濃いピンクに薄いピンク、真っ白に斑入りまで。遠目には鮮やかなピンクや白が映えますが、近づいて一つ一つの花を見ると、斑入りの「多摩の流れ」が面白いですねぇ(←写真左)
羊山公園ふれあい牧場の、羊と鯉のぼり
 “芝桜の丘”の入り口に当たる3ヶ所には、お土産や軽食を売る屋台が出ています。「テレビでもおなじみ!秩父名物きゅうりの朝漬・もろきゅう」とか、ピンクの羊の着ぐるみを着たキティちゃんが芝桜の花にまみれている絵柄の「秩父芝桜キティ」とか、まぁ色んな物が売られています。埼玉版のハローキティは、草加せんべい・狭山茶・秩父夜祭など様々なバージョンが生まれていますから、もう驚きませんけど。
 芝桜の丘の西隣には“ふれあい牧場”があって、柵の中で羊が飼育されています(写真右→)。もともと秩父のこのあたりで羊を放牧していたことから“羊山公園”と名づけられたんだそうで。ちなみに鯉のぼりは、羊山公園の管理責任者の方が、自宅から持ってきたものだそうです。粋なことをしてくれるじゃないかぁ。

 それにしても、札所巡りに長瀞、12月の夜祭ぐらいだった秩父の観光資源に、芝桜が加わったというのは、秩父にとって大きいのではないでしょうか。今までゴールデンウィークに客を呼べる目玉がなかったわけですから。写真にたくさんの観光客が写っているので、賑わいぶりがお分かりいただけると思いますが、中高年ばかりかと思いきや、家族連れやペット連れ、若いカップルも見られました。
 また、羊山公園のついでに長瀞へも足を伸ばす人が結構多いようですね。お昼ごろに秩父鉄道の上り・羽生行きに乗ったら、3両編成の電車は結構な乗り具合で座れず、でも大部分のお客さんは長瀞で下車、車内は空席ばかりになりました。お昼前後に秩父鉄道では、秩父・長瀞をはさんで、三峰口・影森〜野上間で臨時列車を出しているくらいです。

 NEW! 5月12日には秩父市が、今シーズンの「芝桜の丘」への来場者を発表しました。翌13日の埼玉新聞によれば、4/2〜5/10の推計来園者数は870,483人。私が行った翌日の5月4日に、今季最多の95,000人を記録しました。昨年の984,000人から減ったのは、「天候の具合で開花が遅れ、観光客の出足が遅れたから」だそうです。現地で来園者にカンパを呼びかけた“芝桜環境整備基金”は約1650万円、駐車場利用者から徴収した“駐車整理料”は約1870万円。合わせて約3520万円から諸経費を差し引いた残りが、芝桜まつり実行委員会から秩父市へ寄付され、芝桜の手入れや公園の整備に使われます。ちなみに昨年までの“基金”と県の補助を使って、今年3月にスプリンクラーが設置されました。夏の秩父盆地は暑いですからねぇ。


東松山・箭弓稲荷ぼたん園

【東松山・箭弓稲荷神社のぼたん園】

 秩父鉄道・秩父駅から上り電車に乗り込んで、寄居まで来ました。ここでもう1ヶ所、花の名所を見てみたいと思い、第一候補に児玉町の“骨波田の藤”を考えていたのですが、寄居から児玉へ向かうJR八高線はなんと9分前に出たばかりで、次は80分後。このまま行くと、着いた頃には日が傾いてしまいます。そこで第二候補へ進路転換。東武東上線に乗り換えて、東松山までやってまいりました。駅のそばにある箭弓(やきゅう)稲荷神社は、東武鉄道の初代社長・根津嘉一郎氏が、東上線が東松山まで開通したことを祝してボタンを奉納したのが始まりで、今や約1,300本の箭弓稲荷神社ぼたん園が境内に出来上がっています。さらに平成2年には市街地から北へ4kmほどの大谷地区に、東松山ぼたん園がオープン。約30,700m2の敷地に約5,800本のボタンなどが栽培されています。ぼたんの見頃は入場料大人500円。ぼたんのシーズンには、東松山駅西口から30分おきに直行バスが出ています(片道100円)。
箭弓稲荷ぼたん園の藤棚とつつじ  話を箭弓稲荷に戻しますと、こちらは東松山駅西口を出て徒歩5分、坂も石段もなく、本当に近くてラクです。しかも入場無料。広さやぼたんの本数では東松山ぼたん園にかないませんが、敷地が広すぎるのもくたびれますし、手ごろな規模だと思いますよ。ちなみに、昭和49年に定められた市の木は松、市の花はぼたん。

 芝桜もさることながら、ぼたんも色とりどりですねぇ。濃い赤紫、鮮やかな紅、明るい桃色、純白、しぼり、そして珍しいところでは黄色いぼたんまで。それだけでなくつつじも多数植わっていますし、園内中央には藤棚もつくられています。ぼたん・つつじ・藤の3ショットは配置の関係で難しかったので、せめて藤棚ごしのつつじをどうぞ(←写真左)。藤棚の下では、地べたに車座になってささやかな酒宴を広げるおじさんたちもいます。入場無料の気安さでしょうなぁ。
 お手ごろなのはいいんですけど、場内に演歌や歌謡曲が流れているのは、なんだか微妙に風情がそがれます。箭弓稲荷の境内では「ぼたんまつり」が開かれているのですが、その一環として、神社の祭り舞台で“奉納 芸能舞踊大会”をやっていて、演歌や歌謡曲に合わせて踊っているのを、通りすがりの観光客が遠巻きにして見ているのでした。氷川きよしの歌が多めに選曲されているのは、近頃の傾向なのでしょうか。
 ぼたん園のすぐ外には、ぼたんの鉢植えや園芸用品を売る出店もあれば、いすや机を出して飲み食いさせる露店もあります。店先で焼きそばや焼きとりを焼いてますなぁ。 東松山名物の“やきとり” そういえばご当地東松山の名物はやきとり。当コラムでも以前にご紹介しましたが、東松山のやきとりは鶏肉ではなく“豚のカシラ肉”を用い、埼玉特産の長ネギも添えて、タレは白みそをベースに、唐辛子やにんにくなど10種類以上の香辛料をブレンドした“味噌だれ”をつけます。市街地へ出てやきとり屋に入ろうと思っていたのですが、箭弓稲荷の境内で食べられるのならば好都合。カシラ2本に鶏1本をいずれも味噌だれで、缶ビールも添えて、真っ昼間から頂いてしまいました。


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